実践ソフトウェアエンジニアリングによるリラーニングへの誘い

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実践ソフトウェアエンジニアリング(第9版)の入手から2週間がたち、すでに読破した方もちらほら見かけます。本書は二段組みの構成でしかもページ数が多かったので大変だったと思います。(とはいっても読みやすさ等の観点から原著から落としている部分もあるので、原著はもっと大変なのですが)

さて、多くの方は一周したところでおそらくこんな感想が得られたのではないでしょうか。

一通り開発を経験し勉強もたくさんしたはずなのに、案外知らないことが多かった

これがどうして起こるかというと、主に次のようなことが原因です。

  • 体系知識の更新をしてこなかった
  • 知識入手と経験(実行検証)のサイクルを回してこなかった
  • ドメイン特化しすぎた

以前の記事でも「体系は更新されるものである」ということを述べましたが、本書や多くのBOKのように定期的に更新されるものは常に追っておかないと、すぐに知らないことばかりになってしまいます。世の中の常識は変わり続けることは皆さんも日々の生活で実感していると思いますが、体系においても同じことがいえようと思います。

知識入手と経験のサイクルですが、知識というものは経験して初めて身につき、経験で得た気付きをもって知識を再入手することで知識と身に付きが洗練されます。つまり知識だけでは頭でっかちになり理解まで至りませんし、一方経験のみでも俺流となってしまい、体系的になものにはなりません。

そしてドメイン特化しすぎたということですが、企業に属した技術者としての経験を積むと、当然ながら自社の特定ドメインの製品作りにはかかわりがありますが、他のドメインに幅広くかつバランスよくかかわることは難しいです。また、国内企業のように課長相当職になると物を作るというよりは、会社側の人間として組織運営などマネージメント(ここでいうマネージメントはソフトウェアプロジェクトではありません)にロールが移ってしまい、エンジニアリング技術から離れてしまいます。最近は国内の企業においても、主任・係長から上のキャリアがマネージメントルートとスペシャリストルートに分かれるという制度を新設するところが多くなってきてそれ自体は良いのですが、うまく制度設計しないとマネージメントルートにソフトウェアプロジェクト技術がわたり、スペシャリストルートにはそれ以外の要素が渡るということになってしまい、結果として体系的な知識や経験と言う意味ではどっちつかずという状況になります。

そういったわけで、入社してそれなりの年数をソフトウェアエンジニアとして働くと「万能感」を自認する病にかかる方も多いわけですが、そんな病にかかっているかどうかを気がつけるというのが本書を読破することで得られる一つの効果なのだと思いいます。

あくまで本書は「大学生の教科書」ですから、そういった意味で、知らない箇所がある場合、そこはプロとして恥ずかしさを持つべきで、もしそういった感想を持った方は改めての学び直しに取り組んでみてはいかがでしょうか。今後の新人は本書を学んだうえで入社してきます。そういった若い方との体系的知識での競争に敗れ去らないように、我々はこういった技術書で常に学び経験のサイクルを回し続けることで、戦って行く必要があるのだと思います。現在の新人さんは、30代以上の人の何倍もの知識を大学で学んできていますし、AIやデータ分析、セキュリティなどはなおさらです。

ぜひ本書により、自らの状況を再認識し、新人さん含めた方々との切磋琢磨にあらためて意識を向けてみてはいかがでしょうか。

小生自身、翻訳活動のなかで自分の知識の足りなさ、劣化具合を本当に反省しました。
一部で本書をベースとした教育テキストを作ってはどうかという話も出ており、それは(着手時期は未定ですが)今年取り組んでいくようにと考えています。

※本記事は実践ソフトウェアエンジニアリング第9版アドベントカレンダーのにも登録しています。他の記事もあわせて読まれると、本書や翻訳プロジェクトについての理解が深まるので、ぜひご参照ください。

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