体系を使った、組織や個人の技術力成熟度判定

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実践ソフトウェアエンジニアリング(第9版)には売れ行きが好評のようで、初刷りはもう底をつきかけているようですね。amazonでは法外な価格がついていますがどうぞ買わないようにお願いします。おそらく年明けに重版かけてくださるのではと思います。

さて、本記事ですが、「読む」という以外の使い方を簡単にご紹介したいと思います。これについてはET & IoT 2021 での講演でも軽く紹介した内容になります。

本書は、ソフトウェアエンジニアリングの体系ですが、その目次を利用して、ソフトウェアエンジニアのエンジニアリング技術力の成熟度判定モデルとして利用することができます。この方法の利点は簡単にまとめると次のようなものがあります。

  • 簡単に、すぐに取り組める
  • 目次をそのまま評価項目とする
  • ETSSと併用するために、フレームを合わせる
  • 個人に入力してもらうことそのものが学習効果を生じる

非常に簡単なことで、ITSSやETSS、Test.SSFのフレームに目次を貼り付けて、同じように判定するだけです。具体例をスライドから引用します。

いかがでしょうか。章節項をそのまま貼り付けるだけです。簡単ですね。
あとはそれぞれ、読書してもらって内容の理解レベルをつけてもらいます。これにより、各自のソフトウェアエンジニアリングの知識レベルが明らかになります。ITSS等と異なり、知識としてもっているかどうかが判定されるので、判定もブレにくいです。これを判定した上で、すでに判定しているITSSやETSSと見比べてみると、ITSS等での判定の信頼性を評価するということもできます。本手法は知識として持っているかの判定になりますが、ITSSやETSSといったものは実践できるかという判定の色が濃いものです。したがって併用することで、知識面と経験面の両方から個人のスキルを評価することができるようになります。なお、この9版では、目次構成がすばらしく、本例に示す知識レベル評価の軸構成としては申し分ないと思います。(過去の版はドメイン色が強いきらいがあり、本例のような手法にははじみにくいかもしれません)

 さて、個人の評価ができたらそれを集約することでチームビルドに活かすことができます。これもスライドを引用します。

個人評価を集約して平均化・平準化することで、チームとしてのレベル状況が可視化できます。これにより「このプロジェクト・案件で、十分なソフトウェアエンジニアリングレベルが満たされているのか」がわかります。この例では明らかに上級レベルがたりません。つまり、プロジェクトの技術的難易度が高い場合、失敗することが予見できるということです。これまで見てきた多くの現場では、こういったスキル面でのチームビルディングが疎かになっていることがほとんどです。こういった手法を利用することで、エンジニアリング知識面でのケアをしやすくなります。

さて、逆のパターンもありますね。こちらもスライドを引用します。

今回のプロジェクトを成功させるためにはこれくらいのエンジニアリングスキルレベルが必要だという仮設を立てたうえで、それを満たすためのメンバーを選定するというやり方です。本来はこうあるべきなのですが、そうはなっていないことが多いと思いますし、このように事前に本例のようなやりかたやITSS等を使ったチームビルディングのためのプリプロセスを丁寧に行っている現場はほぼ見たことがありません。(とはいうものの、小生は外資を経験しておりませんので、外資は状況が異なるのかもしれませんが)

というわけで、この実践ソフトウェアエンジニアリング(第9版)は、目次が素晴らしいのでこういった手法を用いることができますよという例をご紹介しました。なお、体系であればなんでも使えますので、PMBOKやSQuBOK、SWEBOK等のについても同様なことはお試しになると良いでしょう。実際、とあるクライアントではそういったことを行い、ITSSでは見えない知識レベルというものを見える化し、チームビルドや教育構築をご支援させていただきました。

以前の記事にも書きましたが、知識入手と現場実践のサイクルを回すことがとても大切ですが、本手法は前者をカバーするもの、後者はITSS等がカバーするものと、乱暴ながらも使うことでより本当の実力というものが把握できるようになります。どうぞお試しいただければともいます。

※本記事は実践ソフトウェアエンジニアリング第9版アドベントカレンダーのにも登録しています。他の記事もあわせて読まれると、本書や翻訳プロジェクトについての理解が深まるので、ぜひご参照ください。

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