テストプロセスの能力改善技術 ~その2 「TPIの概要」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

 その1の記事ではテストプロセス改善の概要を取り上げました。その2ではTPIの概要を取り上げます。


 TPI(Test Process Improvement)はIQUIP社(現Sogeti社)によって提案された技術で,同じく同社によって提案されたTMap(Test Management approach for structured testing)というプロセス技術をベースにしています。

 TPIは日本語版が「テストプロセス改善―CMM流実務モデル」という書名で出版されています。


 TPIのモデルはキーエリアとレベル,チェックポイントと改善提案から成ります。

TPIモデル.png キーエリアはテストプロセスを20のキーエリアに分けたものです。それらは,AからDまでの4段階のレベルを持っています(ただしいくつかのキーエリアはAだけだったり,A~Bの2段階だったり,AからCの3段階です)。

 キーエリアとレベルは,キーエリアごとのレベル判定結果をテスト成熟度マトリクスにマッピングすることで全体を可視化することができます。

 各レベルには,そのレベルを達成するために必要な複数のチェックポイントが割り当てられています。また,レベルに到達するためのガイド情報である改善提案が示されています。


 ではどのようにテストプロセスの成熟度を判定し,次にどのような改善に取り組むかを分析すれば良いでしょうか。

 TPIは分析のため「テスト成熟度マトリックス」を準備しています。

 テスト成熟度マトリックスにはキーエリアとレベルがマッピングされ,自身の組織が各キーエリアをどの程度のレベルまで達成し,全体としてどの程度の成熟度を持っているのかを資格化,判定することができます。キーエリアとレベルは,0から13までのレベルを持つテスト成熟度マトリックスにマッピングされます。成熟度判定はこのテスト成熟度マトリックスを利用して実施することになります。言葉ではイメージが難しいのですが,図をみていただけるとすぐに理解いただけると思います。

 このTPIを使ったプロセス改善とは,キーエリアごとに現状のレベルを分析します。その後,それらをテスト成熟度マトリックスにマッピングし,全体としてできているところとできていないところ,成熟度レベルを明らかにします。最後に,何を改善するべきかの指針を得て,施策を検討決定実践することでテストプロセス改善を行います。この個々の施策の実践については皆さんご存じのPDCAアプローチで取り組むことができます。


 以下に,一番単純な使い方を示します。

 キーエリアごとの現状のレベルの分析ですが,これはは,キーエリアのレベルごとに設定されたチェックポイントをどれだけ達成しているかで判定ができます。

 例えばキーエリア「テスト仕様化技法」だとレベルはAとBの二段階です。Aは「非公式な技法」,Bは「公式な技法」というレベルです。Aに示されるチェックポイントは明確な技法を用いてテストケースを記述する」「技法の必須項目は(a)開始状況,(b)実行すべきテストアクション,(c)期待される最終結果」の2つです。これらが達成されていれば,レベルAを達成していると判定できます。

 すべてのキーエリアに対してレベル判定を行ったら,次にテスト成熟度マトリクスにマッピングします。ここで,全体として「制御されたレベル」「効率的なレベル」「最適化されたレベル」のどのレベルにあるのかが見える化されることになります。

 こうして見える化した結果,組織のテストプロセスにとってどのようなキーエリアが十分でないのかが認識できます。認識できたなら,あとはどのキーエリアから手をつけるかを決めるだけです。

 ただし,手をつけることに決めたキーエリアについて,具体的にどう進めればよいかわからないかもしれません。そこで参照するのが「改善提案」です。どのように改善を進めればそのレベルが達成できるのか,その観点が示されています。また,このとき,チェックポイントの依存関係も合わせて参照しておくことが必要です。そのレベルを達成するためには他のキーエリアのあるレベルが前提になっているかもしれないからです。もし依存関係にあるキーエリアが不十分である場合,まずはそれを改善するなど計画を変更しなければならないかもしれません。

 計画が決まったら,あとは実践あるのみです。そして実践後に再分析し,成熟度を更新します。


 TPIの使い方を解説しましたが,案外簡単だと思ったことでしょう。実際,それほどテストプロセスが成熟していない組織であっても,レベルごとに示されるチェックポイントがあるおかげでそれなりに分析ができます。見える化の手段も準備されています。取り組み始めるのはそれほど大変ではなく使いやすいモデルと言えましょう。

 ただし,注意点もあります。
先ほどテスト仕様化技法について触れましたが,チェックポイントの表現がわかりづらいと思いませんでしたか? テストの知識があればチェックポイントの表現が多少わかりづらいとしても対応ができますが,まだテストプロセスが改善されていない組織によってはチェックポイントや改善提案を読み解くこと自体が難しいということが起こります。このため,先の記事でも書きましたが,活動の最初はテスト技術およびプロセス改善に通じたコンサルタントや識者の協力を得るのが良いでしょう。もしここでコストをけちるようではそもそも改善は進まないでしょうし,進んだとしてもその歩みは遅い物になるでしょう。


 以上,TPIについて簡単に説明しました。内容について詳しく知りたい方がおられたら,日本語訳である「テストプロセス改善―CMM流実務モデル」を参照すると良いでしょう。

 なお,この記事で取り上げなかったTmapについても同書の付録に要約がありますので,合わせて参照するとよいでしょう。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク