HAYST法でも有名な秋山浩一さんの新刊「ソフトウェアテスト技法ドリル―テスト設計の考え方と実際」が発売となりました。

今回秋山さんから献本いただき,早速読んでみましたので簡単に感想を書いてみたいと思います。


■前書きから見る本書の対象読者と狙い
 著者が本を書き下ろす思いや狙いといったものは前書きに書かれることが多いようです。
実際に世の中のレビュー等を見ると,前書きを読まずに本文を斜め読みした結果,あさっての方向の感想を書いてしまっているのだろうなぁと思うものを良く見かけます。
読者のみなさんも,本文に入りたい気持ちをぐっと抑えて,まずはしっかりと前書きに目を通してみて,本書の狙うところや前提を理解した上で読み進めることをおすすめまします。
 早速前書きを読んでみると,想定する読者として「新人レベル」と「テスト設計の担当経験があり勉強にも取組んでいるテスト中級技術者」が挙げられています。
また,テスト技術者だけではなく,TDDで開発を行うソフトウェア開発者にも参考にして欲しいと想いが書かれています。ざっくりとまとめると「テスト技法の習得に意欲があり,また,実際に現場に活かしたいと思うテスト技術者およびソフトウェア設計者の初級から中級レベル」となるかと思います。
 狙いとしては,以下の3つが書かれています。
1)少しずつ難しいテスト技法を紹介することで気がついたらテストがうまくなっていたという姿を目指す
2)欧米のテスト技術だけでなく,日本人が考案したテスト技法についても紹介する
3)インターネット上に公開されているツールを紹介し,現場ですぐに活用できるようにする
本書ではこの狙いが徹底して本章に織り込まれています。
それが故に,狙いをしっかりと意識して読み進めることで,より深く内容を理解でき,腑に落とすことができるでしょう。
特に2)はここまでしっかりとノウハウの形で紹介された書籍はあまりなく,とても貴重な内容だと思います。
読者の皆さんには,まずこの前書きを理解するところから始めていただくことをおすすめします。もちろん「本書の読み方」も忘れずに。
■点から立体へ
本書ではテスト技法を6章に分けて解説しています。

  • 第1章 点に注意を向ける
  • 第2章 線を意識する
  • 第3章 面で逃がさない
  • 第4章 立体で捉える
  • 第5章 時間を網羅する
  • 第6章 多次元の品質

扱っている情報として,同値分割/境界値分析といった基本的なところはもちろんのこと,三色ボールペンや不具合モード,探針テストなども取り上げられています。また,CFD法が取り上げられていることも見逃せません。
インターネット上では原因結果グラフやペアワイズテストのツールが無償提供されていますが,それらも取り上げられ,また丁寧に使い方が解説されています。
■例題を挙げて技法が解説される
本書では,基本的に例題を挙げ,その例題に対して技法を解説していきます。
困っている現場では,まず解決したい問題があって,それを解決できる方法を探します。
おそらく本書を手に取る読者のほとんどはそういった状況でしょう。
ですから,現在直面している問題を想像しながら読み進めることで,より理解が進むはずです。
解説は,技法そのものの手順だけではなく,その際の着眼点であったりポイント,つまりノウハウが丁寧に記述されています。
技法自体は理解できても実際に使うときにうまくいかないのは,そういったノウハウがないからです。
これが自然と得られる構成になっているのは非常に良いことだと思います。
技法解説の個別の感想はしませんが,読み終わる頃にはテスト技法そのものの知識だけではなく,テストのものへの見方やポイント,ノウハウが身についていることでしょう。
■勉強のスタイルで読もう
非常に多くのことを得られますが,それはドリルの名から想像出来るように「勉強」のスタイルで望むことが大切だと思います。
例題を一緒に解かなかったり,斜め読みしただけでは,きっと「わかった気になるだけ」に陥ってしまいます。
電車の中で読むのも良いのですが,本書に関しては是非「机に座って,ノートを準備して」読んでいただきたいなと思います。
■全体雑感
これだけ盛りだくさんの内容がコンパクトに読みやすく纏められていることが本当にすごいと思います。
日本人によって書かれているために,日本の事情にもよくあっており,きっと理解しやすいと思います。
個人的には「アドホックテスト/モンキーテスト」をテスト技法として取り上げていないことに好感をもちました。いまだにテストは単に手を動かすだけの頭は必要のないものと理解している人がいますが,実際はそうでないことは読者の皆さんはご理解いただいていることでしょう。
しかし,未だに頭を使わない作業として,タスクがふられることがあります。
この状況は特に新人レベルに対して影響が大きいのです。
まだまだ刷り込みが甘い時期に,しっかりと「テストは頭を使わないとダメ」と意識させることが非常に大切です。そこに本書は貢献することでしょう。
■テスト技法を学ぶ最初の一冊として間違いなくオススメ
本書のいいところはたかだかこれくらいでは書ききれないほどです。
是非皆さんには実際に手にとっていただき,ドリルにチャレンジしていただけたらと思います。
一冊が終了したとき,あなたはきっとかなりの成長を遂げているはずです。
この秋の読書に是非チャレンジしてみてください!
■参考:秋山さんの書籍
  
ソフトウェアテスト技法ドリル―テスト設計の考え方と実際
ソフトウェアテストHAYST法入門 品質と生産性がアップする直交表の使い方
ソフトウェアテストの基礎:ISTQBシラバス準拠

投稿者 ikedon

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