テストプロセスの能力改善技術 ~その3 「TMMiの概要」

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 その2の記事ではTPIの概要を取り上げました。その3ではTMMiの概要を取り上げます。


 TMMi(Testing Maturity Model integration / テスト成熟度モデル統合)はTMMi Foudation によって提案・維持されている技術で,その前身としてSW-CMMがあります。

 TMMiの名前から想像される通り,TMMiはCMMiのテストプロセス版と考えていただいてよいと思います。実際,CMMiを補完する位置づけであり,そのモデル構造もCMMiに合わせてあります。ですので,すでにCMMiに取り組んでいる方については,それほど違和感を持たないでしょう。本記事はTMMiのみについて紹介します。ただし,現時点でTMMiについては日本語文献がありませんので筆者の(かなり)拙い訳ベースとなります。ご容赦ください。


TMMi構造とコンポーネント.pngTMMi成熟度レベル.png TMMiの構造はその(大きな)構成要素として成熟度レベルとプロセスエリア,スペシフィックゴール・ジェネリックゴールを持ちます。

 成熟度レベルは5つの段階を持ちます。成熟度レベルはテストプロセスや組織の成熟度を表し,低レベルから高レベルに向けてInitial(初期),Managed(管理された),Defined(定義された),Measured(測定された),Optimization(最適化)のレベルを持ちます。テストプロセスなにそれ?という段階がInitialですね。そこから改善や整備,高度化を進めることで,レベルというステージを上がっていくことになります。一歩一歩高みを目指してというのは山登りを想像しやすく,活動の全体像としてわかりやすさがあります。

 各成熟度レベルは複数のプロセスエリアを持ちます(Initialはさておき)。例えば,レベル2は「テストポリシーと戦略」「テスト計画」「テストのモニタリングとコントロール」「テストの設計と実行」「テスト環境」の5つのプロセスエリアを持ちます。あるレベルにおけるすべてのプロセスエリアについて改善が行われると,そのレベルが達成されたと判定します。  各プロセスエリアは「目的」「イントロダクションノート」「スコープ」が設定され,複数のスペシフィック/ジェネリックゴールを持ちます。あるプロセスエリアを達成するためには,このゴールを満足しなければなりません。例えば「テストポリシーと戦略」は「テストポリシーの確立」「テスト戦略の確立」「テストフォーマンス指標の確立」の3つのスペシフィックゴールと「管理プロセスの制度化」「定義されたプロセスの制度化」の2つのジェネリックゴールを持ちます。

 スペシフィックゴールとはそのプロセスエリア固有のプラクティス目標です。ジェネリックゴールとはそのプロセスエリア固有ではない共通的なプラクティス目標です。それらスペシフィックゴールとジェネリックゴールには,それを達成するために必要な「プラクティス」が設定されています。プラクティスには,さらに「成果物の例」「サブプラクティス」「ジェネリックプラクティスの詳細」「参考情報」が示されます。

 以上がTMMiモデルの概要です。構造としては比較的単純ですが,よく見るモデル図からすると意外に多くの要素(コンポーネント)を持つことに注意したいところです。それほど単純ではありません。


 ではどのようにテストプロセスの成熟度を判定し,次にどのような改善に取り組むかを分析すれば良いでしょうか。TMMiはアセスメントモデルを持ちますので,アセッサーの資格を持つ人や組織にアセスメントしてもらうのが良いでしょう。ただし,それには結構な金額もかかりますし,受けるための準備も大変です。また,筆者は国内でTMMiアセスメントをサービスとして提供しているコンサルタントや企業を知りません。英語での対応になってしまうかもしれません。そこで,まずは自分たちでやってみたいということであれば,いったんそれはさておいて,簡易的なセルフアセスメントを実施するのが良いと思います。現時点では,国内にそういったサービスを提供する人や企業の出現を待つというのがよさそうです。まぁ,TMMiを導入するとともに自分たちがコンサルサービスを立ち上げるくらいに頑張るという考え方もありますが…

 さて,簡易的にセルフアセスメントする場合の具体的な手順ですが,とても単純です。基本的には成熟度レベルとプロセスエリア,スペシフィック/ジェネリックゴールを表にしたものを準備し,達成しているものを塗りつぶしていけばよいだけです。塗りつぶせたら,全体として,できているところとできていないところ,成熟度レベルが明らかになります。ここまできたら,今いるレベルの次のレベルで塗られていないところに取り組めばよいことになります。具体的にどういう考えで取り組めばよいかは,スペシフィックゴールやプラクティスが示してくれますので,それを踏まえて具体的な計画を立てます。

 計画が決まったら,あとは実践あるのみです。そして実践後に再分析し,成熟度を更新します。


 TMMiの使い方を解説しましたが,TPIに比べると重量感を感じることができたでしょうか。TMMiの文書を読むとわかりますし,サイトにも要求事項として示されていますが,事実上,ISTQB-FL以上の知識を所有していることが取組むための前提です。ですので,事前にISTQB-FL程度のトレーニングは必要になります。もちろん組織のメンバが全員知っておく必要はないのですが,推進者には必須の知識と言えます(筆者はそう実感しています)。

 ただし,TMMiのようなステージドモデルは進捗や今の立ち位置がとてもわかりやすく,組織的導入の場合に合意が取りやすいですし管理もしやすいです。いわゆるトップダウンアプローチで取り組むと使いやすいモデルなのではと思います(もちろんボトムアップ的な使い方もできますが)。

  最後に注意点です。

 TPIの記事にも書きましたが,活動の最初はテスト技術およびプロセス改善に通じたコンサルタントや識者の協力を得るのが良いでしょう。また,継続して取り組むために,継続的な協力を得るのが良いでしょう。成熟度レベルが上がると必要となる技術レベルも上がっていくことになります。ここで足踏みが起こりやすくなります。別に回し者ではないのですが,トップダウンアプローチということもあり,導入時にはきちんと予算を確保してこのTMMiの導入自体を計画的に進めることが必要だと考えます。

 以上,TMMiについて簡単に説明しました。内容について詳しく知りたい方がおられたら,TMMi Foudation が公開している文書を参照してください。


 3回に渡ってテストプロセス改善技術について概要を紹介しました。まだ日本国内ではなじみのない技術ですが,うまく利用すると大きな効果を得られます。是非取り組んでみて下さい。

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