【開催レポート】長崎QDG2015  その3:SQuBOK読破会活動紹介とSQuBOKにおける派生開発

 レポート第3回目です。

長崎QDG2015_150812_153334.jpg このセッションは「コミュニティショートセッション」と題し,他の技術コミュニティから活動紹介を行っていただくものです。長崎の 聴講者は他の地域でどのようなコミュニティが,どのような活動しているのか知ることができます。また,県外のコミュニティは長崎の技術者に活動を知ってもらうことができ,お互いの技術交流のきっかけになることを期待しています。

 発表者の藤沢さんはSQuBOK読破会に所属し,定例会の運営に積極的に関わっていらっしゃいます。そのほか,品質やテストに関わるコミュニティで活動するほか,本イベントにも実行委員として関わっていただいています。本セッションでは,SQuBOK読破会メンバの立場から「SQuBOK読破会活動紹介とSQuBOKにおける派生開発」 というにタイトルで発表いただきました。(本記事掲載の写真やスライド画像は藤沢さんの許可を得て掲載しています)

SQuBOK読破会活動紹介とSQuBOKにおける派生開発 from Kosuke Fujisawa

 発表は, 前半は「SQuBOK読破会の活動紹介」,後半は「SQuBOK V2 における派生開発の記述」の二部構成です。

 前半は「SQuBOK読破会の活動紹介」でした。
SQuBOK読破会活動紹介.pngSQuBOK読破会活動紹介2.png SQuBOK読破会とはその文字通り「SQuBOK(第二版)を読破する」ことが目的の会です。とてもいい本なのですが,なにせ300ページを超え る分量です。一人での読破は大変だけれども,何人か集まって輪読スタイルをとれば読破できるはず!と8名(+オブザーバ1名)で活動し ています。
月一度の定例会では主に次の3つがなされます。
  1. 各自が読んだ書籍を紹介
  2. SQuBOKの輪読(音読)
  3. 懇親会

 1.は,SQuBOKに関連した本や,SQuBOKへの関連を限らずに書籍を紹介しあいます。これにより,普段自分は読まないだろうなという本( の感想)から幅広い知識を得ます。紹介された本はおすすめ書籍リストとして記録されており,現在その数は50冊を超えています。

 2.は,読破会のメインとなる活動です。輪読かつ音読のスタイルを取ります。音読でのいいところは”読み飛ばせない”ことにあります 。また,多人数での輪読なのでさぼることもできません。これによりあまり興味がないところでも頑張って読み進めることができます。あ る程度の塊で読み,その後議論を行います。疑問はないか,追加できる文献はないか,typoなど誤りはないか,等です。メンバーは所属企 業もチアがえばドメインも違うため,多角的な議論になり,それぞれに気づきが得られます。この議論は記録に残しており,typoのリストはSQuBOK策定部会へフィードバックした実績があります。
 3.は,せっかく集まるのですから,懇親会も実施しています。輪読から派生する話題もありますし,まったく関係ない話もありますが, そういった話を通して親睦を深めます。活動開始したばかりの時は堅かったのですが,今では気楽に語り合える人間関係を醸成でき,それ が輪読の議論にも良い影響を与えていると思います。
 現在は200ページほどを突破,7月に修善寺にて合宿を開くなど活発に活動をしています。今後は議論まとめや読み解き資料を作っていきたいとしていました。

 後半は,「SQuBOK V2 における派生開発の記述」でした。読破に取り組む藤沢さんの目線で,SQuBOK V2 で派生開発技術がどのように取 り上げられ,直接的な対応技術であるXDDPを解説していただきました。
SQuBOK読破会活動紹介3.png まず最初にSQuBOKの読み方が解説されました。

  • 普通に各項目を読む
  • 参考文献をたどる
  • 関連知識領域をたどる

 この読み方に従って解説が行われました。

 藤沢さんが考える派生開発に関する直接的なトピックとしては「2.2.3.7 T:派生開発」「3.5.3.2 T:USDM」があり,それらに関連したト ピックとして「1.3.2.2 T:モデル化」「2.2.3.6 T:プロダクトライン開発」「2.11.1 S-KA:変更管理」「3.12 KA:保守の技法」があるとし ました。SQuBOKのような辞書的なものを参照する場合,派生開発ならば派生開発を調べて満足してしまい,関連するトピックまで目が届き ませんが,このように実はたくさんのトピックと関係があるということが理解できました。つまり,派生開発をうまくやるためにはこれら 周辺の技術にも通じておく必要があるわけです。
 次にSQuBOKにおけるXDDPについて簡単な解説がありました。
SQuBOK読破会活動紹介4.pngSQuBOK読破会活動紹介5.png SQuBOKにおけるXDDPは「2.2.3 S-KA:プロセスモデル」の1トピックで,目的として「ミスや漏れによる手戻りを防止して短納期を達成し ,プロジェクトの混乱を未然に防ぐ」,「変更要求を「変更」と「機能追加」に分類し,それぞれ異なる手順で開発する」と解説されているとのことです。
 ただし,これだけだと概要すぎるので,実際の適用に向けて詳しく知るには参考文献をたどる必要があると続けました。参考文献ではXDDPの3つの成果物「変更要求仕様書」「トレーサビリティマトリクス」「変更設計書」についてに,より詳細な解説があると し,その内容が簡単に示されました。
 変更要求仕様書については「変更内容について”特定”」「変更箇所に関する情報を整理」するもの です。変更設計書は「関数など具体的な変更内容を”文章”で記述」します。それらをつなぐトレーサビリティマトリクスは「変更要求仕様書と変更設計書を関連付ける文書」としました。
 また,先ほど挙げられた関連トピックについても簡単に内容が紹介されました。XDDPを導入するためには,周辺の技術も併せて押さえておくことが大切と結ばれました。

SQuBOK読破会活動紹介6.png セッションの最後では「SQuBOK駆動品質改善」ということで,SQuBOKを起点にソフトウェア品質を改善していこうとメッセージが伝えら れました。まず「SQuBOKを読み」,「興味ある分野について理解を深め」,「得られた知識をもとに実践し」,「さらに勉強したい分野を 見つける」。これをぐるぐると回すことで自身の技術知識の向上はもちろん,継続的な品質改善ができるとしました。

 藤沢さんによると,自分も最初はBOKは辞書だから必要なときに調べるだけで活用しにくいと考えていたが,輪読をしていくとそのイメー ジは覆ったとのこと。読めば読むほどに関連知識が増えていき,品質改善に取り組むうえでの技術の全体像や抑えておくべき技術がわかる ことで,より効果の高い品質改善に取り組む手ごたえを感じているそうです。

 実は藤沢さんのセッションについてはその資料についてレビューに関わらせていただいていたので内容は把握しているつもりでしたが, 実際に藤沢さんの口から伝えられる情報は力強く,特にSQuBOK駆動品質改善については示唆をいただきました。自身はかなり乱読するほう だと思うのですが,乱読であるがゆえに,それらをきちんと実践するという観点が抜けてしまいがちです。SQuBOKに限らず,技術書の活用 の仕方について考えてみようと思いました。

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