TPI NEXT ざっくり要約 ~その3 第2部「BDTPIモデル」

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 「TPI NEXT ざっくり要約」第三回は,第2部「BDTPIモデル」を簡単に紹介します。


 まずは第2部の目次を確認しましょう。第2部は二つの章が設けられています。

  • 第2部 BDTPIモデル
    • 第3章 BDTPIモデル
      • 3.1 テストプロセスの品質に対して見識を与えるBDTPIモデル
      • 3.2 テストプロセスをいくつかの側面に細分化するキーエリア
      • 3.3 初期レベルから最適化レベルまでの尺度としての成熟度レベル
      • 3.4 各キーエリアの成熟度を客観的に測定するチェックポイント
      • 3.5 視覚的な概観を提供するテスト成熟度マトリクス
      • 3.6 テストプロセスの現状を表すテスト成熟度マトリクス
      • 3.7 チェックポイントのクラスタにより継続的なモデルになるBDTPI
      • 3.8 現状および目指すべき状況を表すテスト成熟度マトリクス
      • 3.9 どのようにチェックポイントを満たすかを示す改善提案
      • 3.10 テストプロセスと他のSDLCプロセスを関連付けるキーエリア達成のコツ
    • 第4章 キーエリア
      • 4.1 利害関係者のコミットメント
      • 4.2 関与の度合い
      • 4.3 テスト戦略
      • 4.4 テスト組織
      • 4.5 コミュニケーション
      • 4.6 報告
      • 4.7 テストプロセス管理
      • 4.8 見積もりと計画
      • 4.9 メトリクス
      • 4.10 欠陥管理
      • 4.11 テストウェア管理
      • 4.12 手法の実践
      • 4.13 テスト担当者のプロ意識
      • 4.14 テストケース設計
      • 4.15 テストツール
      • 4.16 テスト環境

 今回の記事では第3章がモデル全体の解説で,第4章はキーエリアごとの具体的な中身(リファレンス的な記述)となっているため,第3章についてのみ扱います。なお,解説にあたっては,TPIとBDTPIの違いを意識しします。ですので,以前の記事を参照してから本記事をお読みいただくと理解しやすいかと思います。


 BDTPIモデルは「キーエリア」「成熟度レベル」「チェックポイント」「改善提案」「キーエリア達成のコツ」そして「クラスタ」があります。このうち「キーエリア達成のコツ」と「「クラスタ」が新規に追加されている要素です。成熟度レベルも,TPIでは単なる”レベル”という名称でした。

 BDTPIには16の「キーエリア」があり,それぞれに複数の成熟度レベルを持つほか,SR(Stakeholder Relation:利害関係者との関係),TM(Test Management:テスト管理),TP(Test Profession: テスト業務の専門性)の3つのグループに分けられています。

  • K01:利害関係者のコミットメント:SR
  • K02:関与の度合い:SR K03:テスト戦略:SR
  • K04:テスト組織:SR K05:コミュニケーション:SR
  • K06:報告:SR K07:テストプロセス管理:TM
  • K08:見積もりと計画:TM
  • K09:メトリクス:TM
  • K10:欠陥管理:TM
  • K11:テストウェア管理:TM
  • K12:手法の実践:TP
  • K13:テスト担当者のプロ意識:TP
  • K14:テストケース設計:TP
  • K15:テストツール:TP
  • K16:テスト環境:TP

 「成熟度レベル」は「初期レベル:アドホックな活動」「コントロールレベル:適切なものごとを行う」「効率化レベル:ものごとを適切に行う」「最適化レベル:刻々と変化する状況に絶えず順応する」の4つです。それらは(初期レベル以外は)「チェックポイント」を持ち,テストプロセスに対する期待を定義しています。

 「チェックポイント」は「満たしている・満たしていない」で判定し,全てのチェックポイントを満たしたとき,そのキーエリアは特定の成熟度レベルを達成したという判定できます。こうして,例えばすべてのキーエリアがコントロールレベルを満たした場合,全体としてコントロールレベルにあるという判定ができます。

 「クラスタ」とは,ある改善を行う上で関連する複数の複数のキーエリアのチェックポイントをグループ化したものです。クラスタは中長期的な改善のロードマップとして利用することができます。また,Aグループを達成したら次にBグループへと,わかりやすいのも良いでしょう。BDTPIでは標準クラスタを紹介していますが,クラスタを自組織でカスタマイズして使うのもよいでしょう(クラスタを作る ≒ 改善ロードマップを作る)。

 「改善提案」と「キーエリア達成のコツ」は成熟度を上げていくための追加となる情報を提供します。前者はテストプロセスそのものに焦点を当てているもので,後者は,SDLC内のテストプロセスやその他プロセスがお互いの実践例から恩恵を受けられる箇所を提示しています。


 TPIでは成熟度レベルを視覚化する手段が「テスト成熟度マトリクス」として提供されていましたが,BDTPIでもテスト成熟度マトリクスが提供されます。ただし,BDTPIで少々モデルが変わっているため,BDTPIでのテスト成熟度マトリクスも見栄えに少々の変更があります。ただし,各キーエリアごとにチェックポイント判定を実施し,判定した成熟度レベルをマッピングすることで,テストプロセス全体の見える化を行うことは変わりがありません。現状どのキーエリアがどの程度の成熟度レベルにあり,さらに全体としてどの成熟度レベルにあるのか認識することができます。こうして認識できれば,どこをもっと成熟させていくのか,計画を検討することが可能となります。

 そこで役に立つのが「クラスタ」です。BDTPIでは「基本クラスタセット」が提供されています。これをテスト成熟度マトリクスに重ねることで,次にどのキーエリアを改善すべきか,そのガイドとなってくれます。基本クラスタセットはA~Mまでが設定されています。基本的にAからB,BからCへと改善を進めていきます。すべてのキーエリアでAを達成したら次にBに取り掛かります。ここで,例えばコミュニケーションはBから始まっていますが,これは他のすべてのAが達成されてから取り組んだ方が良いよ,というガイドと捉えることができます。また,自己アセスメントにより,例えば全てのAが達成されていないということがわかれば,まずそこの改善に取り組むのが良いでしょう。

 実はTPIにも「依存度」ということでこのクラスタの考え方(の基)はあったのですが,BDTPIではわかりやすい形に改訂されています。この基本クラスタセットが提供されるというだけでも,BDTPIは現場にとって使いやすいものになったと思います。


 以上,第2部についてざっくりと要約してみました。BDTPIのモデルおよびテスト成熟度マトリクスについて解説しました。筆者の感覚ですが,構造がすっきりしたことで,とても使いやすくなった印象があります。とくにクラスタは考え方が単純明快ですが,とても強力であり,またテストコンサルタントの知見が反映されているものですので,テストプロセスの成熟度がまだ低い組織にとっては,改善のガイドとして強力な威力を発揮するのではないかと思います。ただし,モデルはモデルなので,鵜呑みしないことに気を付ける必要はありますが。

 次回は第3部をざっくりと要約します。

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